2023年01月05日
グラフィックデザイン
会社案内(企業パンフレット)とブランディング
昨今「企業のブランディング」という言葉を耳にすることが増えました。ブランディングとは企業が、自社あるいは自社の製品・サービスの価値を形成し、高めるため行う様々なコミュニケーション活動のことです。ブランディングにもいくつかの種類が存在します。何を・誰にブランディングするのかなどそれぞれについてご紹介します。
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インナーブランディングとアウターブランディング
ブランディングを考えるとき、活動のベクトルをどこ向きにするかによって、インナー、アウターつまり内向き、外向きどちら向きにブランディングを行うか向きによって手法が異なります。
インナーブランディングは自社もしくは自社の製品・サービスを社員に認知してもらうためのコミュニケーションです。企業のインナー(社員)でブランド認知を統一できるので安定的な企業活動が容易になります。外部環境の変化に左右されずブランドを軸に自社の価値を再認識できるからです。一方アウターブランディングは自社もしくは自社の製品・サービスの価値を社外の利害関係者へ認知してもらうためのコミュニケーションです。企業もしくは製品・サービスに共感してもらい、共感をもってもらうための活動を指します。
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サービスブランディングと企業ブランディング
一方、活動の方向性ではなく対象の違いによっても2つの異なるブランディングが存在します。
自社の製品・サービスに対して行うサービスブランディングと、企業そのものの価値向上を目的にする企業ブランディングです。製品・サービスのお客様を増やす、売り上げを増やすことを目的とするのがサービスブランディング、自社そのもののファンを作りロイヤリティを高める目的なのが企業ブランディングです。
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ブランディングのメリット
企業がブランディングを行うメリットはどのようなものでしょうか?
- 顧客ロイヤリティの向上
- 自社や自社製品・サービスの差別化
- 付加価値の向上
- 自社社員の帰属意識の高まり
- ジネスパートナーの信用
- 採用活動の効率化
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ブランディングのポイント
ではブランディングを行う上でのポイントは何でしょう?自社のブランディングを確立するために外せないポイントが5つあります。
- 競合との違いをはっきりさせる
- 誰に伝えたいのかを絞り込む
- 伝達方法と表現方法を明確化する
- 自社の強みを分析する
- ブランドのアイデンティティを確立する
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ブランディングとしての会社案内(企業パンフレット)
よく「企業パンフレットは会社の顔」などと言われ、各種ツールの中でも特別の位置付けの存在です。新規顧客の開発や採用活動、信用調査用としてといろいろな局面で使い勝手のいい汎用性の高さと、それぞれの局面に要求される幅広い掲載情報などがその理由でしょう。
ブランディングの観点からみて企業パンフレットはブランディングのかなめになる重要なツールと言えるでしょう。
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会社案内(企業パンフレット)で行われるブランディング
「企業のブランディングツール」としての会社案内(企業パンフレット)は、記載する情報はもちろん重要ですが、ビジュアル的な要素や体感的な要素も非常に重要なため、グラフィックデザインから印刷用紙や加工といった出来上がりの質感にまでこだわりたい。
例えば、製品やサービスが非常に高級にもかかわらず、チープな質感の手触りだったり、ブランドカラーが仮に青にもかかわらず、パンフレット全体が緑でデザインされていたり。残念ながら、それでは企業のブランディング構築は成り立ちません。企業パンフレットを「企業のブランディングツール」として活用するのであれば、その企業の業種やサービスに見合った内容で 顧客がその企業のイメージをストレートに喚起・醸成できるものを作ることが重要です。
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企業ブランドを伝える企業パンフレットの制作事例
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匠の技と新しい発想力の融合【制作事例:野村製作所様会社案内】
大型の工作機械メーカー野村製作所様。その企業ブランドは製品クオリティの高さ。会社案内(企業パンフレット)のメインビジュアルはきさげ加工と呼ばれる精密機械を超える手作業による加工サンプルの画像を登用。本文ページでも、ごつっとした職人の手とギラギラした若手の視線を紙面の中で対比させることで、長い歴史の中で培われてきたベテラン社員様の手ワザと若手社員の斬新で柔軟な発想力が融合されることで産み出されている製品クオリティーの高さを訴求する1冊となっています。
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次代への変革を進める企業の息吹【制作事例:八木春様会社案内】
老舗の繊維問屋からスタートされ、近年製造小売りへの業態変革に成功された八木春さま。世代交代を訴求しつつ、企画力で勝負されているDNAをタオルと宝石の原石をモチーフにしながら、未来を見据えた企業姿勢を表現してみました。デザインは十分に余白を活かし、生地や糸の持つ柔らかさと、ソリッドな宝石の原石の鋭利なエッジの対比で業態変革を行っても変わらない企業ブランドである「新しい繊維事業を予感させる」ハイセンスは1冊となりました。
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大地に根を張る信頼性と挑戦心を表現【制作事例:植田基工様】
日本国内でもトップクラスの保有機械台数を誇る基礎工事会社植田基工様。主に建築コンサル・ゼネコン・サブコンなどの顧客層をターゲットとした会社案内・事業案内パンフレットである本紙は、それぞれの工法紹介に十分なスペースをさき、わかりやすく実用性の高いパンフレットとなっています。メインビジュアルには屋久杉の写真を登用。悠久の時の中大地に根を張りまっすぐに立つその姿で企業ブランドを表現しています。
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まとめ
ブランディングとは組織や製品そこに込められる理念まで非常に多岐にわたる見直しと理念武装、それに対する様々な施策が必要となる全社的な一大事業となりますが、会社案内(企業パンフレット)作成時にはその端緒となるツールの作成であると位置づけ、できるだけたくさんの意見を吸い上げ、さまざまな施策を試みることをお勧めさせていただきます。
まずはすべての部署から編集委員を選び、全社的な取り組みとされること、全社的な意見を集約されることから始めてみてはいかがですか?